さよならテリー・ザ・キッド

おとなをからかっちゃいけないよ

子供の想像力の映画『マイマイ新子と千年の魔法』

http://www.mai-mai.jp/index.html

見てきました。素晴らしかった、けど話題になってなさすぎ!

「今なにが流行ってるか」って、2chまとめブログとかツイッター見てればだいたいは分かると思うんだけど、それでも「マイマイ新子」のことは全然タイトルすら聞いたことなかったんですよ。

でもたまたま絶賛してる人を見つけて、調べて感想をあさってみたら見た人は全員が全員、大絶賛してるので気になったので実際に映画見てきました。

マイマイ新子と千年の魔法」を迷わず見に行ってほしいんですよ!!!! - たまごまごごはん
http://d.hatena.ne.jp/makaronisan/20091201/1259612324

↑とんでもない熱量(なのにネタバレなし!)でこの映画をお勧めされてるので、「そんな映画聞いたことねえよ」って人はまずこの文章を読んでもらえれば興味を持ってもらえることかと思います。僕はこれを読んで見に行きました。


その他絶賛してる感想の一部。

http://d.hatena.ne.jp/Dersu/20091202/p1
>「こんな映画が観たい」との願望に応える映画ではなく。「本当はこんな映画が観たかったんだ」と気づかせてくれる映画

http://d.hatena.ne.jp/eichi44/20091204/p1
>『マイマイ新子と千年の魔法』(片渕須直監督)という作品が、記憶にも記録にも残らず埋もれていくにはあまりに惜しい。口惜しい。歯がゆい。ふがいない。

http://twitter.com/pencroft/status/6200852004
マイマイ新子は日本映画史/世界アニメ史において「事件」なのですが、それをどう伝えればよいのか困ります。

http://kotoba-project.jp/blog/2009/12/06/maimai/
>素晴らしかった。本当に素晴らしかった。これはなんというか、存在すること自体が奇跡のような、そんな映画だ。何が奇跡なのかを一言で言えば、この映画が「物語のイロハを完全に無視した映画である」ことだ。いや、違うな。「物語のイロハを完全に無視したところで作られながら、観るものの心に極めて深い感動を与える」ところに、この映画の素晴らしさがある。

http://pixiv.cc/yayaya-no-ya/archives/1724254.html
>できれば、同世代のアニメファンに観てもらいたいんです。「アニメ映画はここまで来たんですよー!」と教えてさしあげたい。昔からアニメを観ている人ほど、「マイマイ新子」の画面の繊細さと豊かさに目を見張るんではないかと思います。

http://sasab.hp.infoseek.co.jp/colmun/colmun-maimai/maimai_index.html
>子どもたちの泣き・笑い・遊びを、子どもたちの目線で、みずみずしく描く。……などと書くと、「あー、『涙と感動の超大作』ね、けっ」と感じる人もいるでしょう。そう思ったあんた、認識が甘すぎるぜ。 遊びが持つ「想像力」のパワーをテーマに据えたこの作品、明らかに、一度少年時代を終えた大人という、一筋縄ではいかない偏屈な連中だからこそ、感じることが出来る感動を持っている。 疑う必要はない。傑作である。それだけ信じて劇場にGoだ。

http://movie.maeda-y.com/movie/01388.htm
>批評家としては一番まずい事なのだが、この映画で私は大いに感動したものの、その理由がわからないという状況に陥った。つまり、説明はできないが、とにかく心を打たれたのである

http://d.hatena.ne.jp/hissa/20091201#1259693032
>「とにかく黙って観に行ってくれ!」「こんな感情の動きをあらわすすべを僕は知らない」

http://b.hatena.ne.jp/makaronisan/20091201#bookmark-17659940
>もっとマイマイ新子の感想が読みたい。あのぼろぼろ流れた自分の涙の意味を知りたい。見に行って何か感じた人、映画の感想書いてください!読みたい!

「めちゃめちゃ良かったけど自分がなんでこんなに感動してるのか分からない」って書いてる人が多い不思議な映画です。僕も面白かったけど具体的にどこがどう面白かったのか全然説明できないので、リンク貼りまくりで少しでも興味を持ってもらって、見に行って欲しいです。


分からないけど分からないなりにちょっとだけ感想を。

上の感想でも書いてる人多いんですが、「文部科学省選定映画」っていう肩書があるせいか地味な印象があるんですよね。なにも知らずにプロモ映像とか公式サイト見ても「いい話なんだろうけど地味そう」としか思わんですよ。ちょっとひねくれてる人なら「泣かせたいんだろうな」とか「はいはいノスタルジーノスタルジー」って思っちゃうのではないかと思います。僕は映画の舞台である山口県出身なんですが、たぶん地元に住んでる時にテレビCMでこの映画のことを知っても「県内でしかやってないんだろうな」って思っちゃいそう。それぐらい地味で話題になってなさすぎ。もったいない。

単純に映像の楽しさだけでも相当なものなのでそれだけでも見て欲しいです。ジブリとか好きな人ならそれだけでも見る価値あるはず。

「主人公の新子が1000年前の風景に思いを馳せる」というシーンがこの映画のキモで、何度も出てくるんですよ。
子供向けの歴史の本って「古代人がどんな生活をしていたのか想像してみよう!」みたいなことがよく書いてあるけど、実際はそんなに想像なんてしないじゃないですか。本に描いてあるイラストを見て「へえー、こんなのだったんだ」って思うぐらいで。

でも新子は想像力が尋常じゃないので、「ここの川が直角になってるのはこういう理由だよ」っておじいちゃんに聞いただけで、あるいは「ここには偉い人が住んでたお屋敷があったんだよ」って学者に聞いただけで想像力が暴走して、実際に1000年前のイメージが立体化して、新子にしか見えてないけど新子は実際にその空想世界で遊べちゃうんですよ。

例えば漫画『ONE PIECE』を読んでると、尾田先生の頭の中ではそれぞれのキャラも全員実際に生きてて、生き物以外の建物だとか文化だとかにも全部細かい設定があって、それぞれの生活を見て切り取って描いてるだけなんだろうなって思う時があるんですよ。漫画に描かれてない場所も全部動いてるというか。
新子もそれと同じぐらいの想像力で1000年前の生活をとんでもなくディティール細かいとこまでイメージできてて、自分の頭の中のイメージの事ながら「へえー、ここはこうなってるのかー」って思ってそう。尾田先生も新子と同じ遊びが得意だったと思いますよ。

「1000年前にも人が住んでた」って言葉だけで言われてもあんまりピンと来ないですけど、実際にそれを超細かいディティールの超美麗アニメで、超楽しそうに新子が遊んでるのを見せられると「昔のことを想像するのって楽しいな」「想像力があれば人は豊かになれるな」って思っちゃうんですよ。この映画を子供の頃に見てたら、もっと空想好きになれてたんじゃないでしょうか。そういう意味では文部科学省選定映画なのは納得です。

ジブリっぽいですけどファンタジー的な要素はありませんし、どちらかというと「大人が見てノスタルジーに浸ってください」みたいなプロモーションをされてる気がするんですけど、ぜひとも子供に見てもらって空想の楽しさを知って欲しい。徳光康之の「濃爆おたく先生」に「さてはキサマ うつつを抜かしたことがないな 愚か者め うつつを抜かしてこそ 豊かな人生!」って言葉がありますが、空想力さえあれば人生は楽しいですから、たぶん。と書いておきながら、大人になってからあんまり空想とかしてないことに気づいて泣きそう。最近はだいたい実際に見えるもののことしか考えてないので、もっと色々と空想して自由になりたいと思いました。

↑ここまで書いた感じだと楽しい映画に見えるかもしれないけど、それだけじゃないのがこの映画のわけわかんないところなのでそのへんは実際に見てくださいとしか言いようがない。


で、最初に書いた通り、全く話題になってないので観客動員的にもボロボロらしいんですよ。

マイマイ新子の続映がピンチです!」
http://d.hatena.ne.jp/makaronisan/20091205/1259893582

都内だと11日金曜で終わっちゃうとこが多いっぽい。
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tyst/id334304/
http://www.mai-mai.jp/theater.html
しかも平日午前中だけに縮小されたりしてるので、もう「近所だと見れない」って人も多いのではないかと思うのですが、見れる人は是非。
もっと、トトロとかと同じレベルで大人から子供まで全員見ていい映画だと思います。映画の動員的には失敗したけど、せめてテレビで毎年やるとか、地方の公民館で定期的にやるとかして、1人でも多くの人にに見て欲しい。


追記

ラピュタ阿佐ヶ谷で12月19日〜26日の間、夜9:00からの上映が決まったそうです!フワッフー!

http://www.laputa-jp.com/laputa/program/mai-mai/

漫画家・放送作家・芸人・ハガキ職人vsオフ喜利!『ロフトプラスワン大喜利大会VOL1 KING OF 大喜利』続報!

http://offgiri.jugem.jp/?eid=74

先日お伝えした9/9のロフトプラスワンイベントですが、芸人やハガキ職人を擁する業務用菩薩チーム、さらには“あの”せきしろさんのチームも参戦決定いたしました。チケット発売はなんと、明日!

業務用菩薩さんが主宰した大喜利イベントに、今回も出演するせきしろさんや、あなたの肉野菜さんが出たのを見に行ったことがあるのですが、めちゃくちゃレベルが高くて戦慄しました。

その時の原宿くんのレポはこちら。
http://d.hatena.ne.jp/Die_maestro_die/20081024/1224849204


オフ喜利目線で見れば、素人集団が放送作家・芸人・漫画家・ハガキ職人に挑む!という構図が出来上がるわけで、これはオフ喜利にとってかなり重要な戦いでありますが、そういうの抜きにして純粋にお笑いイベントとしても面白いはずなのでお暇な方はぜひ。

オフ喜利が果たして一般のお笑い芸人などと比べてどの位置にいるのか?」というのはずっと気になるところではあり、僕の周囲にはコアなお笑いファンの友人がけっこういるのでそういう人にオフ喜利を見せて感想を聞きたいなーとはずっと思ってたけど素人のおっさんたちしか出てないイベントには誘いづらい、という状態だったんですが、そういう人に「オフ喜利、どんなもんじゃい」っていうのを見せつけるにはとてもいい状況だと思います。絶対に負けられない戦いがそこにはある!

9/9(水) ロフトプラスワン大喜利大会VOL1 KING OF 大喜利

http://offgiri.jugem.jp/?eid=73

9月9日(水)(ド平日)に、ロフトプラスワン主催で「大喜利イベントが増えてきたのでどこが一番おもしろいのか決めようや」みたいなイベントがあり、そこに我らがオフ喜利メンバーも出ます(てにをは、館長、原宿、岩倉、ヤスノリ+たぶんもう1人)。

全4チーム出場で、他の参加チームで今のところ発表できるのは漫画家チーム(ピョコタン曽山一寿見ル野栄司市川ヒロシ、中邑みつのり)だけなんですが、あとの2チームはあの芸人さんやあの放送作家さんがいるかもしれません、いないかもしれません。決まり次第お知らせします。

他のチームには笑いで飯を食ってる人が多い中、オフ喜利チームは寿司屋・Tシャツ屋・無職とかなので、「負けて当然、勝ったらおいしい」というシチュエーションです。しかもルール的にもオフ喜利にかなり近いものなのでこれはもしかしたらいけるんじゃないのかと身内びいき込みで思ってるんですが、普段のオフ喜利は基本的にみんなのサイトを好きな人たちの中でやってばかりなので、アウェイでは観客に受けいれてもらえるのか、受け入れられなかった場合にみんなの精神は大丈夫なのか、その辺も含めて必見のイベントといえます。

前売はローソンチケットにて(Lコード:39113)8月25日発売!!
チケットは全国のローソンにあるLoppiでお買い求めいただけます。
http://l-tike.com/guide/loppi.html

赤線

上の『カリスマ入門』について余談。
10年ぐらい前に、雑誌のインタビュー記事をスキャンして赤線を引くだけ(ツッコミや解説なし)のサイト、その名も「赤線」というのがあって、後半は326インタビューばっかりで真っ赤っかになったうえにいつの間にか消えてたんですが、当時は「こんな企画、インターネットでしかできねー!」と思ってたので、それがこんな抜け道的な手段で本になったのがすごいと思いました。

僕のタンブラー「ピタ?」はその「赤線」に影響を受けてるのは言うまでもありません。
http://yude.tumblr.com/
http://yude.tumblr.com/post/14917867
http://yude.tumblr.com/post/15090860
http://yude.tumblr.com/post/15580271
http://yude.tumblr.com/post/118439929

中二病とは何か?『カリスマ入門』(古屋雄作)

カリスマ入門

カリスマ入門

古屋雄作さんの『カリスマ入門』という本が面白かった。
古屋さんは『温厚な上司の怒らせ方』シリーズや『スカイフィッシュのつかまえ方』シリーズのDVDを作った人です。それを知らないとただの自己啓発書の類と思うだろうし、本来はサブカルコーナーに置かれるべきものなのにビジネス本のコーナーに…なんていう可能性もあると思います。というか僕は実際に本屋で見つけられなかったので店員さんに「『カリスマ入門』ありますか?」と聞いたので「こいつ、カリスマになりたいんだ……」と思われていることでしょう。

でも、自己啓発の類じゃないことは読めばすぐに分かります。簡単にいえば「有名人のインタビューなどから発言を集め、分類・解説する」という本になるでしょうか。

まず、第1章「先取りをアピールする」で引用されている文章から見てみましょう。

加藤ミリヤさん
あと、サンプリングについて話すなら、わたしがデビューした後くらいから、日本のアーティストでもサンプリングを取り入れる人が多くなってきたように思うんです。別に自分がその面でのパイオニアだと大声を出したいわけではないんですけど、サンプリングを取り入れた曲作りでは、ほかに負けない自信はあります。」(「Interview File Cast」2008.03)

↑の赤線は実際の本の表記のままです。
この、加藤ミリヤさんの発言について「後半で『別に自分がパイオニアではない』とフォローするのはカリスマに徹しきれていない」としたうえで、本物のカリスマ達の発言を引用します。

押尾学さん
あまり飾らず、気負わずにさ、流行なんてあんまり意識しないで、自分が心底『カッコイイ!』と思ったものだけを信じてこだわりたいよね。俺は日本で流行る前からクロムハーツが好きなんだけど、これはロックアーティストがかっこよく着こなしていたのを見たのがきっかけ」(「チョキチョキ」No.4)

この押尾さんの発言のストレートさを例にあげ、「せっかく先取りの事実をアピールするための発言をしても、遠慮や羞恥心が邪魔をして柔らかな表現になってしまい、結果的に『アピールできていない』という、初歩的なミスが多く見られます」とアドバイスしてくれます。さらには

堂本剛さん
五、六年前、家で自分の髪をアシンメトリーに切ったことがあったんです。したらすごく煙たがられて、心配もされてしまって。でも今じゃ、アシンメトリーの人なんてその辺にだっているじゃないですか。だからその時何か言われても、時が来るまで諦めなければいいんだっていうのも解ってはいるんです」(「Switch」2008.4)

この言わずと知れたカリスマの発言を引用したうえで、
「このような内容をさらに発展させる場合、『最近アシンメトリーの髪型って多いじゃないですか。けど僕、いろんな髪型をやりすぎて来た、ってのもあって、最近はもういいかなーって感じなんですよ(笑)』のように『先取りしすぎて逆にもう飽きた』と宣言するパターンが効果的」
という実践的なアドバイスまで。

ここまで読めば分かるかと思いますが、『カリスマ入門』というタイトルでありながら、完全に「カリスマ」という単語が蔑称になっています。なんてタチの悪い本だ!
まあ、最初にも書いたとおり、本当は笑える本だっていうことが分かりづらいタイトルなのがすごいもったいないな……と思ってたんですが、こういう引用の仕方だし、表向きには「これをマネすればカリスマ性が身に付く!」という方向じゃないと出版できないんだと思います。わざわざ出版社の壁を乗り越えてまでいろんなとこから引用しまくってるし、こんな物騒な本が世に出たこと自体すごい!

でもそういうタチの悪さだけが売りではなく、分類の仕方や解説が丁寧で、いわゆる「中二病」の正体がここまで明らかになっている本はないのではないかと思います。(参考リンク→ 中二病 - Wikipedia

各章のタイトルだけ見ても

  • 第1章 先取りをアピールする
  • 第2章 自分の生きざまを自嘲気味にアピールする
  • 第3章 昂ぶる
  • 第4章 スピリチュアルなものに傾倒する
  • 第5章 あえる(※筆者注・この本では「あえて○○する」の意味)
  • 第6章 表記にこだわる
  • 第7章 エロスを意識する
  • 第8章 常にクリエイティブである
  • 第9章 ジャンル分けを拒絶する
  • 第10章 周りから言われる
  • 第11章 対象物から言われる
  • 第12章 ミュージシャンでもないのに音楽のことになると熱くなる
  • 第13章 狙ってやってるわけではなく、好きなようにやっていたら結果的にそうなっちゃっただけです、という感じでいく
  • 第14章 変な比喩を使う
  • 第15章 偉人をリスペクトする
  • 第16章 自然をリスペクトする

という感じで、見ただけで「わかるわかる」となるはず。ほんとに分かりやすく、中二病の全パターン網羅!という感じなので、この本を読めば誰でもカリスマのマネごとはできるでしょう。例えば芸人さんがコントでカリスマっぽいキャラを演じたい時とかにも参考になるはず。こんな解説本を読んだあとだとそんなコントあんまり面白くないと思いますけど。
逆にいえば、この本を読めば「うっかりカリスマ発言しない方法」というのも分かるわけです。中二病じゃなくても「前から知ってた」とかは誰でも言っちゃいがちですし。


各章で印象に残ったカリスマ発言をちょっとずつ引用します。


第2章 自分の生きざまを自嘲気味にアピールする

Jさん
今の状況は凄くいいですね。肉体的にも精神的にも辛いのは辛いんだけど、走ってなきゃ見られない景色がすごくいい感じで作用しているなあと。『あー疲れた』とブーブー言いながらも(笑)、そういう事の連続がエネルギーに変わってってるというか
―――Jはね、ブーブー言ってるうちは大丈夫。静かになったら死んでる。
わはははは。本当そうなんですよ。鮫みたいなもんという(笑)」(「オリコン」2002.11.18)


第3章 昂ぶる

ドラッグストアカウボーイさん
ダメなミュージシャンとか多いじゃないすか。音楽の“お”の字も知らないような小僧が多くて、すごく居心地が悪い。そういうヤツらに、これがいい音楽なんだって言いたい
とりあえず、ふざけんな馬鹿野郎って思って聞いて?ってことですよ。オレの勝ちだから。勝ち試合じゃないとやりたくないしね(笑)

「み」だけに赤線を引いてるのがめちゃくちゃ面白い。


第5章 あえる

清春さん
クロムハーツってボリュームはあるけど、作りはスムースで、普段の生活でずっとしてても支障はないじゃないですか。でもS.A.Dはつけてると気になってしょうがないっていう(笑)そこもあえて狙って作ったんですけどね。ヘタしたら服脱ぐときにひっかかかって破けるくらいのデザインです」(「ホットドッグ・プレス」No.399)

「S.A.D」というのは清春さんがデザインしたオリジナルブランド「サディスティック・アンド・デンジャラス」のことだそうです。


第6章 表記にこだわる

車田正美さん
漫画界は常に燃えている。走り続けていた漫画屋も、フッと息を抜いたら最後、紅蓮の炎に包まれ灰になってしまう」(ジャンプコミックス聖闘士星矢」2巻)

この他の「肩書きこだわり」の例としては「歌手→ムード歌手(椎名林檎さん)」「格闘家→スポーツ冒険家(北尾光司さん)」。
「カタカナ化」の例として「届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタGacktさん)」「ミエナイチカラ(B'zさん)」。
「K→C法」の例としてRIKACOさん・ACOさん・rumicoさん(小柳ルミ子)・KCOさんなど。


第7章 エロスを意識する

藤井フミヤさん
個展を開くのは今回が3回目なんですけど、“エッチな”というのは今回が初めてなんです。『未来の宗教画』、『宇宙建築』とやってきて今回が『デジタル・マスターベーション。一応、“自意識が目覚めたコンピュータが、デジタルデータの中から愛すべき姿を作り出し、マスターベーションを始めた”という設定なんです。コンピューターって、結局は切ないじゃないですか?そういう切ないエロティシズムを自分なりに表現してみたかった」(「東京1週間」1998.05.12)

すごいとしか言いようがない。藤井フミヤさん・堂本剛さん・押尾学さんあたりは全体的に赤線引きすぎて真っ赤になってました。


その他に発言が紹介されるカリスマは吉川晃司さん・おちまさとさん・西野亮廣さん(キングコング)・KREVAさん・いしだ壱成さん・石井竜也さん・倖田來未さん・木村拓哉さん・反町隆史さん・沢尻エリカさん・土屋アンナさん・hydeさん・佐藤可士和さん・山田詠美さん・江角マキコさんなどです。どうですか、このむせびたつカリスマ臭!

一応、この本のコンセプトは「カリスマは生まれついての器ではない」というもので、確かにこれを読むと「カリスマは獲得可能な『技術』」と思えるようになるんですが、この本の副作用として、どんな人のインタビューを見ても自然と赤線が浮かんでくるようになるので雑誌とか読みづらくなります。どいつもこいつも赤い!



DVD版も出てます。

カリスマ入門 [DVD]

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三沢さんのこと

三沢さんが死んでしまったことについてなかなか受け入れられなかったんですが、昨晩ニュースで当日の映像を見てやっと頭に整理がつき始めてきたので書きます。

僕は93年からプロレスを見始めたので、三沢さんについてはタイガーマスク時代も鶴田との戦いも見ておらず、ちょうど川田とのタッグを解消した時ぐらいからしか知らないのですが。

深夜まで頑張って起きて見ていた全日本プロレス中継では、三沢さんはいつもひどい目にあっていました。川田、小橋、田上、秋山、ハンセン、ウイリアムスあたりに殴られ、蹴られ、投げられ、頭から落とされる。
「三沢になら何をやってもいい」、「新しい危ない技を思いついたらまずは三沢に試せ」。そういう共通認識があるのではないかというぐらいの攻撃を受け、「今日ばっかりは負けるんじゃないの……?」と何度も思いながら見ていましたが、それを2.9で返し、逆転勝利するのが三沢光晴というプロレスラーでした。

プロレスというのは、倒れてから立ち上がる過程を見せる競技です。
普通の格闘技だったらレフェリーに止められているような、フラフラになっているところからの勝利。あるいは、その試合で負けたとしても時間をかけてのリベンジ。勝てないにしても、奮闘する姿。そういうドラマこそがプロレスなんですよ。プロレスラーが倒れても倒れても立ち上がる姿を見て、ファンはプロレスラーの頑丈さに感動し、「日常で辛いことがあっても耐えきれば何とかなるかもしれないな」という勇気を貰うんです。
やられっぱなし、負けっぱなしで終わるなんて非情なものは、ただのガチじゃないですか。死んじゃったらリベンジしようもないじゃないですか。何やってるんですか三沢さん。「リングで死ぬのは本望だろう」って言ってる人も多いですけど、リング上で死んで終わりなんてプロレスの結末として最悪ですよ。それで本望なわけないですよね?


インターネットでの反応を見ても、今回の事故については「悲しい」とか言う前に「意味がわからない」「あの三沢が……」と言ってる人が多いように思います。橋本真也が亡くなったときとも違う感じ。
例えば、超強い格闘家が試合中の事故で亡くなったとしても、こんな感情にはならなかったと思います。プロレスという「受け」が存在する特殊なスポーツエンターテイメントで、「受け身の天才」「ゾンビ並みのタフさ」とまで言われる三沢さんがバックドロップが原因で亡くなったからこそこんな気持ちになってしまうのでしょう。

三沢さんの試合を見ながら「死んじゃう!」と思ったことは何度もありますが、死なないと信じているからこそなんとか見れていたわけで、これからは三沢さんの過去映像すらまともに見られそうにありません。死んじゃう!と思いながらも楽しんで見てる側にも責任はあるのがなんとも辛いです。

この事故きっかけでプロレスが衰退していくのは三沢さんもとても悲しむと思うので、カウント2.9プロレス及びそれをありがたがる風潮がなるべく少なくなることと、安全に対するシステムの整備が進むことを切に願います。

最後に三沢さん、ありがとう、大ファンでした。地元に巡業に来たときに撮ってもらった2ショット写真はまだ大事に持っています。

        • -

訃報を知ってから、思い出したこととか考えたことを雑に箇条書き。

  • 過去の映像を見直すと、川田へのエルボーとかガッツンガッツン入ってて、プロレスに相当見慣れてるはずの今でもびっくりした。
  • 小橋との激闘で、解説の馬場さん号泣。「馬場さんが泣いている!」
  • 馬場さんからダイビングネックブリーカーでフォール勝ち。「禅譲」という言葉が頭に浮かぶ。
  • イリアムスが自宅に飾ってある写真は、自身が三沢にエルボーを食らってるとこ。その写真をプロレスを馬鹿にする人に見せてるという話はとてもいいと思う。
  • 「奥さん、乳頭の色は?三沢光晴オールナイトニッポン!」
  • 三沢「お前らのな、思う通りにはしねぇよ、絶対!」 橋本「三沢ぁ、思い通りにしてやるから覚えとけぇ!」
  • ヒクソンについて聞かれたときの「ドロップキックの受け身ができない人間はウチのリングに上がらせない」という発言に見えるプロレスへの誇り。
  • 冬木がガンになったときの損得勘定抜きでの引退試合開催、冬木の「俺はあいつとだけはケンカしたくない」発言。
  • 丸藤からまさかのGHC奪取。(大人げない!)
  • ノアになってからは、少なくともレスラーとしてはあんまり印象にないです。
  • 最後に三沢さんを生で観たのは2007年12月のDDT新潟大会なんだけど、スタッフとして本部席にいたので「ミ!サ!ワ!」コール出来ず。
  • 入場時にコールしやすい3大入場曲って「爆勝宣言」「スパルタンX」「HOLD OUT(武藤旧テーマ)」だと思うので全滅してしまったなあ……。
  • 武藤とのシングルも夢のままで終わってしまった。シャイニングを肘で迎撃、っていうシーンが見たかった。
  • プロレスゲームでキャラクターを作る時に、どのゲームでもエース格は常にタフな設定にしてしまうんだけどこれは明らかに三沢さんの影響だと思う。
  • この事故で「ノアだけはガチ」を証明したな、みたいなこと言う人がいるけど、結果が決まってようと決まってなかろうと痛いもんは痛いので、投げがハードだからガチ、っていう理論がよく分からない。
  • 予定調和とか茶番とかの揶揄で「プロレス」っていう言葉を使うのが本当に嫌いなので、プロレスってのは「人によってはバカバカしく見えることを命懸けでやる」っていう意味で使いたいと思います。