さよならテリー・ザ・キッド

おとなをからかっちゃいけないよ

三沢さんのこと

三沢さんが死んでしまったことについてなかなか受け入れられなかったんですが、昨晩ニュースで当日の映像を見てやっと頭に整理がつき始めてきたので書きます。

僕は93年からプロレスを見始めたので、三沢さんについてはタイガーマスク時代も鶴田との戦いも見ておらず、ちょうど川田とのタッグを解消した時ぐらいからしか知らないのですが。

深夜まで頑張って起きて見ていた全日本プロレス中継では、三沢さんはいつもひどい目にあっていました。川田、小橋、田上、秋山、ハンセン、ウイリアムスあたりに殴られ、蹴られ、投げられ、頭から落とされる。
「三沢になら何をやってもいい」、「新しい危ない技を思いついたらまずは三沢に試せ」。そういう共通認識があるのではないかというぐらいの攻撃を受け、「今日ばっかりは負けるんじゃないの……?」と何度も思いながら見ていましたが、それを2.9で返し、逆転勝利するのが三沢光晴というプロレスラーでした。

プロレスというのは、倒れてから立ち上がる過程を見せる競技です。
普通の格闘技だったらレフェリーに止められているような、フラフラになっているところからの勝利。あるいは、その試合で負けたとしても時間をかけてのリベンジ。勝てないにしても、奮闘する姿。そういうドラマこそがプロレスなんですよ。プロレスラーが倒れても倒れても立ち上がる姿を見て、ファンはプロレスラーの頑丈さに感動し、「日常で辛いことがあっても耐えきれば何とかなるかもしれないな」という勇気を貰うんです。
やられっぱなし、負けっぱなしで終わるなんて非情なものは、ただのガチじゃないですか。死んじゃったらリベンジしようもないじゃないですか。何やってるんですか三沢さん。「リングで死ぬのは本望だろう」って言ってる人も多いですけど、リング上で死んで終わりなんてプロレスの結末として最悪ですよ。それで本望なわけないですよね?


インターネットでの反応を見ても、今回の事故については「悲しい」とか言う前に「意味がわからない」「あの三沢が……」と言ってる人が多いように思います。橋本真也が亡くなったときとも違う感じ。
例えば、超強い格闘家が試合中の事故で亡くなったとしても、こんな感情にはならなかったと思います。プロレスという「受け」が存在する特殊なスポーツエンターテイメントで、「受け身の天才」「ゾンビ並みのタフさ」とまで言われる三沢さんがバックドロップが原因で亡くなったからこそこんな気持ちになってしまうのでしょう。

三沢さんの試合を見ながら「死んじゃう!」と思ったことは何度もありますが、死なないと信じているからこそなんとか見れていたわけで、これからは三沢さんの過去映像すらまともに見られそうにありません。死んじゃう!と思いながらも楽しんで見てる側にも責任はあるのがなんとも辛いです。

この事故きっかけでプロレスが衰退していくのは三沢さんもとても悲しむと思うので、カウント2.9プロレス及びそれをありがたがる風潮がなるべく少なくなることと、安全に対するシステムの整備が進むことを切に願います。

最後に三沢さん、ありがとう、大ファンでした。地元に巡業に来たときに撮ってもらった2ショット写真はまだ大事に持っています。

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訃報を知ってから、思い出したこととか考えたことを雑に箇条書き。

  • 過去の映像を見直すと、川田へのエルボーとかガッツンガッツン入ってて、プロレスに相当見慣れてるはずの今でもびっくりした。
  • 小橋との激闘で、解説の馬場さん号泣。「馬場さんが泣いている!」
  • 馬場さんからダイビングネックブリーカーでフォール勝ち。「禅譲」という言葉が頭に浮かぶ。
  • イリアムスが自宅に飾ってある写真は、自身が三沢にエルボーを食らってるとこ。その写真をプロレスを馬鹿にする人に見せてるという話はとてもいいと思う。
  • 「奥さん、乳頭の色は?三沢光晴オールナイトニッポン!」
  • 三沢「お前らのな、思う通りにはしねぇよ、絶対!」 橋本「三沢ぁ、思い通りにしてやるから覚えとけぇ!」
  • ヒクソンについて聞かれたときの「ドロップキックの受け身ができない人間はウチのリングに上がらせない」という発言に見えるプロレスへの誇り。
  • 冬木がガンになったときの損得勘定抜きでの引退試合開催、冬木の「俺はあいつとだけはケンカしたくない」発言。
  • 丸藤からまさかのGHC奪取。(大人げない!)
  • ノアになってからは、少なくともレスラーとしてはあんまり印象にないです。
  • 最後に三沢さんを生で観たのは2007年12月のDDT新潟大会なんだけど、スタッフとして本部席にいたので「ミ!サ!ワ!」コール出来ず。
  • 入場時にコールしやすい3大入場曲って「爆勝宣言」「スパルタンX」「HOLD OUT(武藤旧テーマ)」だと思うので全滅してしまったなあ……。
  • 武藤とのシングルも夢のままで終わってしまった。シャイニングを肘で迎撃、っていうシーンが見たかった。
  • プロレスゲームでキャラクターを作る時に、どのゲームでもエース格は常にタフな設定にしてしまうんだけどこれは明らかに三沢さんの影響だと思う。
  • この事故で「ノアだけはガチ」を証明したな、みたいなこと言う人がいるけど、結果が決まってようと決まってなかろうと痛いもんは痛いので、投げがハードだからガチ、っていう理論がよく分からない。
  • 予定調和とか茶番とかの揶揄で「プロレス」っていう言葉を使うのが本当に嫌いなので、プロレスってのは「人によってはバカバカしく見えることを命懸けでやる」っていう意味で使いたいと思います。