さよならテリー・ザ・キッド

おとなをからかっちゃいけないよ

ももいろクローバーとアイドル戦国時代

という記事の「これまでアイドル興味なかった人が人生狂った感」が良かったので自分もももクロのことを書きます。
ちなみに「最近売れかけてるももクロっていうのが気になってるけど何から見ればいいか分からない」という人は、上のやつ以外だと、

という記事もおすすめ。

そんなわけで初心者向けまとめはもう既に書かれているので、僕は「プロレス・格闘技ファンの自分がももクロに興味を持ったきっかけ」という話をします。あくまで「プロレスファンはこういう入り口もあるよ」っていう程度で、「プロレスファンじゃないとももクロは楽しめないよ」って意味ではないですからね。


上で紹介したまとめ記事で画像や動画を見てもらった人は、彼女たちに対して「可愛い」とか「キャラが立ってる」とか、「ダンスが奇妙なうえに運動量が過剰」などの印象を抱いたと思いますし、そこももちろん魅力だとは思うんですが、僕が彼女たちに興味を持ち始めたのは『真夜中のハーリー&レイス』というラジオ日本の番組で「アイドル戦国時代」についての話を聞いたことがきっかけでした。
『ハーリー&レイス』はプロレス&格闘技実況をやっている清野アナがパーソナリティで、プロレスラーやサブカル文化人をゲストに、主にプロレスの話をする超楽しい番組です。(ちなみに今週のゲストが「東京都北区赤羽清野とおる先生、来週が「アメトーク」などでおなじみの加地倫三プロデューサー(テレビ朝日)なので単なるプロレス番組じゃないことがわかってもらえるはず)

で、その『ハーリー&レイス』で、ちょうど1年前、昨年8月31日の回ゲストが吉田豪さんだったんですよ。そこで「プロレス的なものの見方」という話題から「最近のアイドルシーンは戦国時代で大変なことになってる」「その中でももいろクローバーっていうグループがやばい」っていうのを大変分かりやすく話してくれてて、僕はそれを聞いて「これは面白そう」って思って色々調べるようになったので、その吉田さんのトークを一部書き起こしてみたいと思います。

清野「最近だと『プロレスと一番ダブる』っていうのはなんですかね?」
吉田「ちょうど昨日、SKEvsももいろクローバーvsスマイレージっていう戦い(アイドルユニットサマーフェスティバル2010)を見て。ガチでしたねー。
ずっとSKE推してた人間はガッツリ凹んでて、『高田vsヒクソン以来のショックですよ……こんなショックな事はない』みたいな。僕ら客観的に見てる側は大喜びしてて『いやー今日のガチ楽しかった』って」

吉田「SKEっていうのは完全に戦闘集団してアピールされてるわけですよ、BUBKAとかで。全てを敵と認識して、敵に勝つために鍛えられてきたヤツらとしてやってたんですけど、それがももクロに完敗したんですよ。
ももクロってのは、『怪盗少女』の動画を見てほしいんですけど、女子プロとか見てる人も完全にハマると思いますよ。身体能力というか、過剰な動きだけでもすごいんですけど、それが(SKEを)食いに来たりとか、スマイレージっていうハロプロの王道が、完全な王道の強さを見せつけたんですよ。東京ドームに初めて全日本が来た時と同じぐらいの、三沢(光晴)と小川(直也)が絡んだ時の三沢の凄さみたいな。『すげー、全然ガチでもやれる、この人たち!』みたいなものを見せつけたんですよ。ポテンシャルが圧倒的に違うっていう。
SKEってのはAKBの戦闘集団バージョンなんですけど、それに圧勝できるだけのポテンシャルを(ももクロが)持ってるんですよ」

吉田「『俺たちが応援してたのは高田延彦だったのかもしれない』ってSKE側が言い出して。ずっと『Uインター最強』って言ってたけどそれが崩れたみたいな」

まずここら辺までがラジオ本編での内容でした。僕はアイドル界の現状には詳しくなかったんですが、

  • 複数のアイドルが出るイベントがあって、その中でどうやら「ももクロ」っていう運動能力が凄い子達が目立ってたらしいこと。
  • 大手であるハロプロスマイレージも、王道パフォーマンスを見せつけたらしいこと。
  • “戦闘集団”として売っていたSKEは、ファンが凹むぐらいに差をつけられたらしいこと。

が分かりました。今は複数のアイドルが見比べられて、それぞれのファンもそれを戦いに見立ててるんだな、アイドル界っていまこんなことになってるのか!ってことが分かって、すげー面白かったです。
続いてポッドキャストではそこら辺をさらに掘り下げてました。

吉田「今回のももクロvsSKEvsスマイレージの話をまだしますけどね、何が面白いかっていうと、ももいろクローバースマイレージって、マネージャーがプロレスオタなんですよ。だからプロレス心があって、こういうような4つのグループが出るところは戦いだって概念があるわけですよ。交流戦じゃなくて対抗戦だっていう概念で望んでるわけですよ。潰し合いだ、的な」
清野「なるほど、『光を消せ』みたいな」
吉田「ところがSKEはそれを分かってなかったんですよね。交流の場で、シングル曲をアピールしようみたいな、それだけで来ちゃってて、AKBのカバーとかしてアピールしようとか……違うんですよ。潰し合いで来てるほうが勝っちゃうんですよ」
清野「ああー」

吉田「面白いことになってる。かつてハロプロが実力測定の場に出る事ってなかったわけですよ。『うちは別格なんで鎖国して、メジャーなんで交流しませんよ』でやってきたのが、当然向こうもそうは言ってられない状態になってきて、AKBがこんだけデカくなってきて絡まざるを得ない状況になり始めた今が一番面白いんですよ。対抗戦黎明期みたいな。
昨日のももクロFMWに乗り込んだブル中野的っていうか、『私たちのライブ見たいんだったらこっち来いや』的な爪痕がガッツリ残ったんですよ」
清野「すごい歴史的な日だったんですね、昨日は」

吉田「良かったですよ。だから最近交流戦が始まってるんですよね。交流戦にメジャーが混ざり始めてるのが今の段階なんですよ。24時間テレビで、AKBとモーニング娘。が絡んだこともあったんですけど、それ見ても『プロレスだ』と思ったんですよ。モーニング娘。はやっぱりデカいんですよね。身長的にもデカくて、キャリアがあるから安定感もあって、正直モーニング娘。なんか今まったく興味ないんですけど、ああやって並ぶと全女的なものがあるんですよ。JWPなんですよAKBが。ちっちゃくて可愛いし良く出来てんだけど、アイドルとしての可能性は絶対そっちのが高いんだけど、でもやっぱ全女すげえな!みたいになっちゃうんですよね」

吉田「戦いが始まったんですよ、ついに。アイドル戦国時代って言って、そこでマイクで上手いこと言えるグループも限られてるんですよね。昨日の会見でもそこで挑戦的なことを言えたのがやっぱりももクロスマイレージだけで。スマイレージも初めてハロプロが作った対抗戦要員だったんですよ。外に打って出れるグループを初めて作って、他はAKB無視してたのにAKBの名前をことさらに口に出して『AKBに負けたくない』とか。過剰にそういうのを意識して作ったグループなんですよ」
清野「めちゃくちゃ戦略的に練られた集団なんですね」

マネージャーがプロレスオタだから、こういうフェス的な場所を戦いと捉えてるっていうのはめちゃくちゃ刺激的です。
少し前の、ももいろクローバー神聖かまってちゃんのツーマンライブ「ももクロとかまってちゃん」でも、ももクロは「いきなり激しい曲ばかり7曲連続、休憩なしで踊る」っていう、凄いことに初挑戦してるんですよね。自分らのライブでもせいぜい続けて歌うのは3曲前後なのに。そのうえで「私たちのことを知ってる人は手を挙げて!」「今、手を挙げなかった人も、次は絶対挙げさせてあげるよ!」と宣戦布告っていう。完全にかまってちゃんのファンを持って帰る気マンマン。これが「潰し合いモード」ってことなんでしょうね。

さらに、マネージャーがプロレスオタ過ぎると、「対抗戦に強い」以外にもこんな特徴があるという話も。

吉田「ももいろクローバーっていうのは完全なプヲタなんですよ、マネージャーが。だからシリーズのタイトルを『新春ジャイアントシリーズ』とか、『サマーファイトシリーズ』とか付けて、新日本と全日本のロゴマークのパロディでマーク作ったりとか、メジャーデビューをこないだした時の記者会見っていうのを、わざわざホテル借りて、全員ジャージで来て、辻(よしなり)アナ呼んでコールさせて、公開の体重測定やって、みたいな。どうかしてるんですよ。どこに向けて電波出してんだ?ってことやってんですよ」
清野「やり過ぎな感じもしますけど……」
吉田「やり過ぎです。誰が拾うんだって話じゃないですか。拾えるのは僕らぐらいですよ。一部の、プロレスを通ったアイドルオタしか拾えないから」

あとプロレスネタだけじゃなくって、まあレアなやつだとは思うんですけど、ライブでの寸劇でキン肉マンネタもやらされてたらしいです。

この辺は分かる人だけ分かればいいと思うし、「プロレスが分からないからももクロが100パー楽しめなくて悲しい」って人が出てこないことを祈るばかり。非プロレスファンもあんまり深く考えず、単純に楽しんで欲しいです。
とはいえ、矛盾するようなこと言いますけど、「知識ゼロのままで見ても単純にすごさが伝わるけど、余計な知識が知れば知るほどハマる」というのも実にプロレス的なので、ももクロきっかけでプロレスファン増えないかなー、っていうのもちょっと思ってます。