さよならテリー・ザ・キッド

おとなをからかっちゃいけないよ

ジャパンテレビの長寿演芸番組『頂点』編

鶴見亜門っぽい人「はい、ストップストップ!」
坂井「なに試合の邪魔してんだよ、いいとこだったのに!この試合に明日のドームの出場権がかかってたんだぞ!(注・かかってない)」
本多「なんだよ亜門さん、こんなお正月らしい色紋付の着付けに時間がかかって、出てくるのが遅くなったんでしょ」
鶴見亜門っぽい人「さっきからお前ら、俺のことを亜門亜門ってなんだよ!さてはお前ら、ウチのダメ従兄弟がやってるプロレスのチームのやつらか?えー、皆さん、あけましておめでとうございます。私、鶴見亜門の従兄弟で、日本最大のテレビ局・ジャパンテレビの超人気演芸番組『頂点』のディレクター兼総合司会を務めております、三流亭鶴見と申します。我々の番組は皆さんご存知の通り、40年以上も続く超人気番組で、今回はですね、新春特別企画として夜9時から生放送が急遽決定しました。今から収録を行いたいと思います」
本多「ちょっと待ってくれよ、冗談は顔だけにジローラモ*1
鶴見が本多にバックブロー一撃。
鶴見「お前らしつこいよ!俺は人生落語一筋、プロレスなんて一度も見たことないんだ」
坂井「アンタが亜門だろうが三流亭なんとかだろうがぶっちゃけどうでもいいよ。それよりもあんた、部外者がこの神聖なリングで土足に上がったほうが問題なんだ!ここはプロレスの聖地・後楽園ホールだぞ!」
鶴見「わかっちゃいねえなあ、ここ後楽園ホールはジャパンテレビグループの持ち物なんだよ。そして我々は40年以上も毎週『頂点』の収録をしてきてんだ。つまりここでは、いかなるイベントよりも『頂点』の収録が優先されるようにできてんだよ!」
美術スタッフさん達が素早く『笑点』に激似のセットを組み立て始める。あ、ホールの北側ステージに客席がなかったのはこの為か・・・!
鶴見「ここに来てる観客だって、お前ら4流レスラーが手売りで集めた親戚や中学校の同級生だろ?みんな義理で来てんだよ。どこの世界に正月からプロレス見に来るバカがいるんだよ?みんな家でお笑い番組を見たいに決まってんだよ。だったら『頂点』の収録を見られるほうがいいだろ?」
坂井「いったいどうやったらそんな意味わかんねえ理屈が通用するんだ。プロレスの試合中に大喜利するなんて………(後ろ振り返って)ああ!勝手にセットが組まれている!」
鶴見「この美術を担当してくださっているのは㈱つむら工芸さんといいまして、テレビのセットだけではなく吉本新喜劇の舞台づくりも担当なさっている業界の第一人者なんですよー」
ここで会場、「おおー」だって(笑)。


ここで色紋付の藤岡メガネ登場。「師匠!大変です!」と鶴見に耳打ち。
鶴見「ええー!大喜利のレギュラーメンバー全員が楽屋で息を引き取った!?死因はなんなんだ?」
藤岡「老衰です!」
鶴見「ええー!レギュラー6人全員が!?」
藤岡「6人、ほぼ同時に息を引き取りました」
鶴見「なんてこったー。長寿番組の宿命というか、40年以上毎回同じメンバーでやってきたんだ。いつ誰が病気や不幸でいなくなっても不思議じゃないと思っていたが、なんで新春スペシャルで撮って出ししなきゃいけないときにみんなそろって逝っちまうんだ〜。俺を置いていかないでくれ〜、歌丸師匠〜!
本多「実名はやめましょうよ」
鶴見「ああそうだ、君達、さっきはひどいこと言ってすまなかったね。どうだろう?亡くなったレギュラーの代わりに大喜利に出てはくれまいか?」
本多「でもね、俺ら場末の4流レスラーがいきなり大喜利にいきなり挑戦っていわれても無理な話なんですよ」
坂井「バカヤロー!」
本多に平手打ち。
坂井「『頂点』の大喜利って言ったって、所詮出たとこ勝負の一発勝負であることに変わりはねえ。どんな技が来るか瞬時に予想して自分の攻撃を仕掛けていくプロレスと、出題者が出した問題を瞬時に答える大喜利。プロレスも大喜利も、やってることに変わりはねえんだよ!」
この期におよんでプロレスは真剣勝負と言い張る坂井。茶番だ、茶番すぎる。
ていうか試合は!なんで大喜利やることになってんの!「プロレスから逃げない」って言ってたのも前フリかよ!無茶苦茶だなあ。ゲラゲラ。


鶴見「あの、盛り上がってるとこ悪いんだけど、あまり難しく考えないでね。はい、これ大喜利の台本だから」
坂井「ええっ!」
鶴見「これにお題から答えから、司会者のリアクションまで全部書いてあるからね
坂井「どういうことですか!?」
鶴見「おいおい、みなまで言うなよ。毎回生放送なんだ、そんなときに答えが詰まっちゃったら大変なことになるだろう?俺らは出演者、作家、スタッフみんなで『頂点』の大喜利という作品を作っていると思っていただきたい」

なんだってー!『頂点』の大喜利には台本がある!?………野郎、タブー中のタブーに触れやがった…。

鶴見「じゃあ台本を読み込んでおいてください」
坂井「いや、そういうのはいらないです。俺は大喜利を真剣勝負だと思って見てくれてるお客さんに嘘をつくことはできないから」
会場・笑い。


鶴見「うるせー人種だな、プロレスラーってのは。まあビギナーズラックってのもあるかもしれないし、お正月のユルい空気だからみんな笑ってくれるかもな。じゃあ楽屋に戻って着替えてきて」
坂井たち退場。
鶴見「じゃあ準備が出来る前に皆さんにお願いがあります。彼らは素人ですので気の利いたことは言えません。だけどね、テレビに出てるお笑い芸人だってそんなに面白くないんですよ。じゃあなぜ彼らが面白いと感じるのか、それはお客さんやスタッフの笑い声があるからなんですね。それを聞いて視聴者は錯覚するわけです。ですから今回も皆さんは笑い声という効果音で『頂点』という作品作りに協力ください」
なんか色んなとこにケンカ売ってるけど、大丈夫なのかな?


鶴見「じゃあオープニング撮っちゃおうかな」
南席D列23番のお客さんに「そこは俺の指定席だ」とどかして着席。
『頂点』のオープニング映像開始。テーマ曲は「あの曲」に激似のアカペラバージョン(口で「パッパパパパパパ、パッパ、パフォ!」って言ってる)、映像もアレに激似で、不思議なことにマッスル戦士全員の似顔絵が例のタッチで。さっき出演が決まったはずなのにすごい!


鶴見「みなさん、新年あけましておめでとうございます。23315回目の『頂点』、おなじみ後楽園ホールからお届けします。まずは初笑い、トップバッターはこの方々による漫才です、どうぞ!」


出てきたのは東京愚連隊+菊タロー。プロレスラーが漫才やってもお寒いことになるだろうと思いきや、この漫才が意外にもしっかりしてたので普通に笑ってしまった。喋らないキャラのMAZADAの活かし方とかすごかった。この辺の台本・演出もマッスル坂井がやってるんだったらちょっとすごすぎる。


続いて大喜利。色紋付に着替えた坂井・ペドロ・趙雲酒井一圭HG*2、本多が入場。座布団運びは藤岡メガネ。
鶴見「皆さんお待ちかね大喜利です。まずはメンバーご挨拶から!」
坂井「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はイボイノシシ。マッスル亭小坂井でーす!」
ペドロ「妻に『お年玉なにがいい?』って言ったら『あなたがいてくれたら幸せよ』なんて言うんです。妻へのお年玉は週2回、ペドロ亭高石でございます」
趙雲「中国では旧正月のことは春節と言いましてお祝いをするんですが、この旧正月の間は靴を買ってはいけないという風習があります。これは広東語で靴のことを『ハーイ』というんですが、これがため息の『ハーイ』に似てるからなんですね。北京亭ガッツです」
酒井「私、現在15の会社や学校の役員をやっておりますが、先日その中のアニメーションの専門学校が倒産してしまいました。2007年は亥年、私は全ての男子社員や生徒に男らしく元気を出せと言いたいです。2丁目大好き、三流亭カズ太郎でーす!」
本多「チャンララーン!私、故郷イタリアのシーザー村は人口わずか3人。その内2人はクルトンさんと粉チーズさん!さしずめ残りの私はロメインレタスさんでしょうか?♪ロメーイン、ロメーイン、走ってゆけー、ロメーイン、ロメーイン、どこまでも〜。ポッポー!アントーニオ本ペイでーす!」

この自己紹介の時点で既に感心しっぱなし。笑点ぽいヌルさを出しつつも、ゲイキャラやイタリア人キャラを守りきってるのがすごい。アニメーション学院が倒産したことは無理やり入れた感があるけどおもしろいからいいや。


大喜利一問目。
鶴見「皆さんには去年話題になった有名人や歴史上の人物になっていただき、今年見た初夢の内容を言っていただきます。私が『誰の夢ですか?』と聞きますから、名前を教えてください」

ここでは「あいたたた…背中をつる夢を見ました。荒川静香でございます」「叩いたら叩かれる夢を見ました。亀田親子です」ぐらいの、笑点っぽいヌルい大喜利が展開される。唯一、趙雲のみが「ビルから落ちる夢を見ました。ジャッキー・チェンです」とか「警察学校に入るストーリーを見ました」「それポリスストーリーだよな?趣旨わかってる?大喜利って中国にない?」とハズし、最後は坂井が「日本武道館に立っている夢を見ました。僕達全員の夢でーす」ときれいにまとめたところで2問目に。


鶴見「2問目は『頂点』40周年の新しい試みといたしまして、プロレスに関する問題です。藤岡君、リング用意して」
これまでステージ上にしか当たってなかったライトがリングにも。ああそうか、そういえばここはプロレス会場だった。

鶴見「テレビの前の皆さんはご存じないかもしれませんが、ここ後楽園ホールはプロレスの会場としてもよく使われているんですね。そこで皆さんには悪役レスラーになっていただいて、実際にリング上で行われている試合に乱入してもらいます。乱入してマイクを掴んだ時点で実況アナウンサーが『あーっとここでマイクだ!』と言いますんで、そこで何か面白い回答をお願いします。じゃあ実際に戦っていただくレスラーにご登場ねがいましょう!」
テーマ曲が鳴り響き、入ってきたのはDDTの若きエース・飯伏幸太ゴージャス松野

鶴見「イメージわいた?じゃあ藤岡に模範解答やってもらおうかな」
藤岡が一端退場し、飯伏と松野がマジ試合を開始すると、ダッシュで乱入して
「すいません、立見席ってここで大丈夫ですか?」
ゴング乱打。終了〜。
鶴見「ダメだよ立見席はバルコニーに行ってもらわないと〜。じゃあ演者さんにもやってもらおうか。思いついた人は挙手!試合再開!」


本多乱入→マイク
本多「おーい、水島!一緒に日本へ帰ろう!」
鶴見「出たー、ビルマの竪琴!」


試合再開。
趙雲乱入→マイク
趙雲「○$×#◆(中国語)」
鶴見「聞き取れねえ!さっきまで日本語ベラベラだったじゃねえか!」


試合再開。
酒井乱入→マイク
酒井「おい松野!マイミク承認ありがとうございます」
鶴見「そういうのは楽屋でやってくれよ〜」


試合再開。
坂井乱入
後ろ向きで「製作著作・サムライTV」のロゴを出す
アナウンサー「次週、マッスル坂井衝撃の告白!」
鶴見「番組終わっちゃったよ!」


試合再開。
本多乱入→マイク
実況「おーっと、本多がマイクを握ったが何も喋らない!」
解説「ちょっと待ってください!」
カメラは本多の力強く握られた左拳をアップに。
実況「アントンの握り拳から血が・・・」
解説「耐えてます!本多選手も必死に何かに耐えてるんです!」
鶴見「なるほど、本多は松野に対する何かをかみ殺して、あえて乱入して殴ったんだね。分かる。男塾でこういうシーンあったね〜」


試合再開。
ペドロ乱入
何も喋らず、カメラはペドロの手元をアップに。
実況「生命保険の申込書とハンコですね。*3あれ、松野さんの実印ですよ」
鶴見「正月ぐらい仕事忘れろよ!」


ちなみに試合再開ごとに普通に試合をやってますが、実力に差がありすぎるので松野さんはボッコボコになっています。フォールされて試合がやっと終わる・・・と思ったら乱入されるので松野さんは休めずにさらに痛めつけられる、というミニコントが大喜利と同時進行なわけです。あと繰り返しはズルい。笑うもんそんなの。


鶴見「お前ら実況と解説に頼りすぎなんだよ!俺が見本見せる!」

試合再開。
鶴見乱入→マイク。
鶴見「おい松田!あ、間違えた、松野だった!」

会場「えーー」


もう一回鶴見、乱入。
鶴見「おい松野、お前は平田だろう!*4
会場「えーーーーー」


坂井「おい、なんだよ平田って!そんなことより、リング上の松野さんを見て何も思わないのかよ!松野さんは飯伏の攻撃を受けきって、息も絶え絶えになっちゃってんじゃねえかよ!」
鶴見「え、でもさ、こいつらお題のシチュエーションとしてやってるだけでしょ?プロレスなんて芝居みたいなもんなんだからさあ、ある程度どう攻めてくるか分かってやってんでしょ?」
坂井「ちげーよ!あんたはプロレス業界のこととかあんまりわかんねえかもしんねえけど、この飯伏とか松野さんはそういう芝居とか分かんないんだよ。そういうの分からずにプロレスやってる人種もいるんだよ!つまり、飯伏と松野さんは普段どおり普通に後楽園ホールに来て、試合やってるだけなんだよ!2人は『いつもより乱入者が多いな』とかそれぐらいしか認識してねえんだよ!」

観客、大「マツノ」コール。


本多「はい!プロレスとかけまして、『頂点』の大喜利とときます」
鶴見「そのこころは?」
本多「どちらも熱い真剣勝負です!」
ペドロ「プロレスとかけまして、生命保険とときます」
鶴見「そのこころは?」
ペドロ「どちらも命を懸けています!」


坂井「おい、聞こえねえのか!この、会場の大『マツノ』コール!」
本多「どうか2人に試合を続けさせてやってくれないか!この真剣勝負を止めるわけにはいかねえんだよ!」
鶴見「勝手にしろ!試合再開!」


試合再開。リアルに弱い松野さんはヘロヘロになりながらも、飯伏のハードヒットな打撃・飛び技・アンクルホールドに耐え、大「マツノ」コールを受けて丸め込み技で反撃。しかし最後は飯伏のゴールデンスタープレス2007(リング中央からダッシュして、ロープに飛び乗っての三角飛びスワンダイブ式フェニックススプラッシュ)という超大技で止めをさされる。弱りきった松野さんに駆け寄るマッスルメンバー


坂井「ま、松野さんが何かを言おうとしている!」
松野「プ、プロレスとかけて…」
鶴見「プロレスとかけまして?
松野「お…お笑いと…とく…」
鶴見「そのこころは!?」
松野「ど…どちらも受けることが…すべ…て…(ガクッ)」
鶴見「うまいっ!松野さんに救急車1台!!」


リングアナ「ただいまより、ゴージャス松野選手治療のため休憩に入ります」

ま、松野さーーーん!ここら辺の展開がすごい好き。一方で大喜利やって、その大喜利のシチュエーションでは弱キャラの松野さんが繰り返し繰り返しボッコボコにされるっていうのが既に無駄がないわけですよ。しかもひたすら蹴られ続ける松野さんを見て最初は笑ってたのが、何度も繰り返して死に掛けてるのに続けてるのを見て段々と尊く見えてきて、「プロレスラーすごい」みたいな雰囲気に。しかも2人は真剣勝負をしてるだけ、って。そんなはずないのに!
さらに松野さんの「どちらも受けることが全てだ」という、死に掛けなのに上手いこと言うカッコ良さね。これは笑っていいのか泣いていいのか大変だったよ!よくできてるなあ。マッスル坂井、天才すぎる。

*1:アントーニオ本多は語尾にこういうイタリア絡みの単語をつけるキャラなのです

*2:元ガオブラック

*3:ペドロ高石は普段は生命保険の営業をしているということがもはや持ちネタになっている

*4:プロレスファンにしか分からないセリフ