さよならテリー・ザ・キッド

おとなをからかっちゃいけないよ

「さっきTVで映画“海猿”のCMやってたんだけど」
「うん」
「キャッチコピーなのかなんなのか知らないけど“水中には、酸素はない”ってデカデカと出てた」
「まあ、ないよね」
一世風靡セピアの歌を思い出したよ」
「“うーみにー潜るーにはー息を止めなきゃ入れない”ってやつね」
「あれ当たり前のことしか言ってないよなー」
「続きも“息をー止めるのがーいやなら海には入れない”だもんね」
「そんなこと言われても『…ですよねー』ってしか言えない」
「なんでもいいじゃんね、あれ。♪いーえにー入るーにはードアを開けなきゃ入れない」
「♪コーメーをー食べるーにはーまずは炊かなきゃ食べられない」
「♪本をー読むーにはー文字を知らなきゃ読めれない」
「読めれない、って」
「細かいこと言うなよ、楽しくなってきたのに…なんの話してたんだっけ?」
「“水中には、酸素はない”ってあらためて言われても…みたいな話」
「俺も似たの考えよう、映画の宣伝用フレーズで」
「おっ」
「うーんとね…“ジョーズには、歯がない”ってどうかな」
「嘘ついちゃダメだよ」
「ダメかあ」
「歯、無きゃまずいよ。甘噛みっぽくなるよ」
「じゃあ、“ジェイソンには、人を思いやる気持ちがない”」
「そりゃないだろうけどさ。“理性がない”とかで良くない?なんか長いし」
「“キョンシーは、息を止めたら近寄って来ない”」
「そんなの10年ぶりに聞いたよ、ていうか“ない”の使い方、変わってきてるよバカ」