さよならテリー・ザ・キッド

おとなをからかっちゃいけないよ

王様の仕立て屋 -サルト・フィニート-(大河原遁)

王様の仕立て屋』の最新刊が出ましたよ!と騒いでも周りに読んでる人がいないから虚しい。だけどとても良い漫画ですよ。舞台が海外じゃなければドラマ化とかしても良いと思う。
http://comics-news.shueisha.co.jp/common/saruto/mv.html
「とんでもなく腕の良い仕立て職人が他では扱えない難しい仕事を法外な値段で請け負う、でも最終的に悪人は痛い目みるし良い人は幸せになるよ」という、要は『ブラックジャック』『ギャラリーフェイク』の系譜ですね。それの洋服版。うんちく+人情話モノ。主人公は「ですぜ」とは言わないですけど*1。とにかく毎回うまくまとまってて安心して読めます。

大河原遁先生は10年前に『かおす寒鰤屋』という骨董品うんちく漫画を週刊少年ジャンプで描いてて、それも名作だったんですよ。特に第2話『楽ノンコウ』の回が白眉。いま試しに『楽ノンコウ』でググったら、6件しかヒットしないわりに

  • ギャグなしの第二話楽ノンコウは名作
  • 楽ノンコウの話なんかジャンプでやったとは思えないほど渋い内容うならされた
  • 楽ノンコウの回は、何度読んでも泣けてきます
  • 第二話『楽ノンコウ』は珠玉だった
  • 第2話の『楽ノンコウ』が一番お気に入りのエピソード

って感じで全員が誉めてるし、以前にスペースコロニーの人に「『かおす寒鰤屋』って覚えてる?」という話をしたところ「あの落語家の話(第2話のこと)が泣けるよね、『これぐらいの雨なら濡れるのも風情だ』---」とセリフまで覚えられてたような名作です。こんだけ皆がその回の話しかしないっていうのも笑えますが。まあ、10週打ち切りだったんですけどね。
でもジャンプで伊藤若冲の絵画がどうのとかいう話を描いてたらそりゃあ終わるよなあ、というか、『寒鰤屋』の末期は主要キャラのほとんどが古武術の使い手とか忍者の末裔とかになってたりするので、おのれジャンプシステムめ…と思ったものでした。『仕立て屋』でも無駄に女性キャラを増やしたりセクシーショットを挿んでくるのはその頃の呪いかもしれません。別に萌え絵を描けるタイプの人でもないのに!

かおす寒鰤屋 (ジャンプコミックス)

かおす寒鰤屋 (ジャンプコミックス)

*1:id:kowagari:20030728:1059350336