■ - さよならテリー・ザ・キッド

発売された頃、いろんな人が「失踪日記がどこにも売ってない」と書いてて、その後に新聞にとりあげられたりしたせいで今は平積みで割とどこでも買えます。

みんな買えない買えない言うわりには内容に触れてる人がいなかったので、なんでそんなに騒がれてるか知らないまま購入、というミーハーかつギャンブル的なことをしてしまったけれど、めちゃくちゃ面白かった。

で、どんな内容だったかというと、かつて天才と呼ばれた漫画家・吾妻ひでおが、近年あんまり仕事してなかった間のドキュメント漫画。連載中の仕事と家族をほったらかして失踪（2度）→ホームレス生活→家族には連絡取らないままにガス配管工職人→アルコール中毒で強制入院。

僕も過去にバイト先に連絡しないで辞めたことのあるクズ人間だから、今の仕事を急に辞めたくなる衝動にかられたらどうしよう、ホームレスになったらどうしよう、と怯えてたりするのだけど、そういう人はこの漫画を読むと「ああ、人間は仕事を辞めてもなんとかなるな」と思ってしまって大変だと思う。

路上生活で天ぷら油を飲んだりアル中で幻覚を見たりっていうようなシャレにならない話なのに、終始ギャグタッチだから楽観的に見えてしまうのが怖い。絵柄も「SFファンにロリコンを教え込んだ*1」という可愛らしい感じだし、作者が本当に笑えないと判断したことは暗くなっちゃうから描いてないらしいんだけど。

巻末での対談でとり・みき先生に「事実をありのままに書いたほうが『作家たるもの』みたいな感じで偉いように思われるけど、ギャグとして消化して表現したほうが凄い」というようなことを言われていて、それは日記サイトにも言えることだよなーとか思った。