さよならテリー・ザ・キッド

おとなをからかっちゃいけないよ

『悟空道』

お昼休みに『 FLASH 』(週刊誌)の立ち読みしてたらドラマ西遊記特集みたいなのがあって、ついでに「ドラマ以外で西遊記にインスパイアされた作品達」つってドラゴンボール珍遊記・ソンソン(ファミコン)等いろいろ紹介されてたんだけど、山口貴由先生の『悟空道』が載ってないよ!まあ確かにまわりで読んでる人少ないけど!ネットで検索しても情報少ない*1けど!

というわけで『悟空道』の紹介です。

ひとことで言うなら「山口貴由西遊記を書いたらこうなった、いや、こうなっちゃった」としか表現できません。山口先生の漫画を読んだことのある人ならこれだけでワクワクするかと思いますが、もうちょっと補足を。

山口先生の前作・『覚悟のススメ』の世界観については「特撮・日本軍・ヤンキー・宝塚がごちゃ混ぜになっている」ということを書いたことがあるんですが、『悟空道』はそこから日本軍を抜いて西遊記をブチ込んだ感じでしょうか。途中で西部劇になったり時代劇にもなったりしますが。しかも山口先生のパンク精神というかやりたい放題ぶりは『覚悟』よりアップしており、初っ端に出てくる敵達はいきなり「僕の名は自由!」「僕の名は平等!」と名乗るし、玄奘(女性)はやたら裸にされるし、されたらされたで亀甲縛り状態だし、「仏契」と書いて「ぶっちぎり」と読むし、釈迦の拳は場数を踏んだ空手家のようだし。

狂っただけの世界なのかと言われるとそんなことはなくて、連載後のインタビュー

悟空道が終わって、少年漫画の王道じゃないけど、愛と冒険心とかすごい出したなという気持ちがあって

と先生が語っている通り、獄界一の暴れん坊・悟空と究極の慈悲を持った玄奘ラブロマンスでもあり、仏教的ファンタジーな世界観の冒険活劇でもあります。ベースはあくまで西遊記だから、ラストまで仏教の経典を絡めて上手くまとまっております。つうかこんだけゴチャゴチャしてるのにまとめるってすごすぎる。

まあ山口作品の常として、受け付けない人は全く受け付けないと思うけど、好きな人は大好きというのはあると思うので、とりあえず1巻を読むといいかと思います。そして1巻なのにいきなり「これまでのあらすじ」があることにズッコケるといいです。

しかもあらすじが「46億年前、星くずが集まって地球が生まれた」から始まってることに「そこからかよ!」と2度コケるといいです。

悟空道 13 (少年チャンピオン・コミックス)

悟空道 13 (少年チャンピオン・コミックス)

不思議に思うだろうがこの俺は 自分より強い奴がいると聞くと 地球を二周りしても 会いに行きたくなっちまうんだ

というセリフに対して「なんで二周りだよ!無駄だよ!」とか怒らずに「かっこいい!」と思える人なら楽しめるかと思います。

*1:斉天大聖以外の6人の大聖を名乗る妖魔の名前すら出てこない!艶天大聖・死鳥から駆天大聖・獅駝まで全員漏れなく魅力的なのに!